2017-07

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ライアンですが、場車内の空気が最悪です

ニンテンドーDS版のドラゴンクエストIVリリース記念
懐かしいネタをうpしておこう

7月30日

とうとう勇者様とめぐり合う。
1章以来の出番にテンションが上がる。
戦闘開始、頑張るぞ。皆速い。俺が「たたかう」前に戦闘終了。
おもむろに勇者様が「馬車のアリーナと交代な」とおっしゃった。
しぶしぶ了解する。

馬車の中にはデブとジジイとやたら帽子の長い緑なヤツがいた。
こちらを一瞥して、奴らはまた視線を床に落とす。

「あの…はじめまして。王宮戦士のライアンと申します」

返事はなかった。


7月31日

全く会話をしないまま1日が過ぎた。
見た目がカタい人間にうつるからかもしれないと思い、
馬車内で今日は兜をかぶらなかった。

誰もそれに気付かないようだった。


8月1日

馬車の中がやたら暑いので鎧も脱いだ。
うとうとしていると不意に棺桶が場車内に突っ込んできた。
何事かと思ったが、緑のヤツが意気揚揚と飛び出ていった。

「マーニャ早く死ねよ…」

消えるような声でジジイが言った。
ジジイの声を聞いたのはそれが初めてだった。


8月2日

勇者様に怒られた。
昼間、少しデブともめた。そのせいだった。

昼間、カビ臭い馬車内でメシを食っていると初めてデブが擦り寄ってきたのだ。
「あんた、戦士かい?」
妙に高いその声にいささか驚きつつも、そうだと応えた。
「チッ…また前衛キャラかよ。アリーナが死んで、お前も死んでからか…」

俺はしばらく無視していた。

「アンタ、1章だったんだってな?」
デブがしつこく話し掛けてくる。
「仲間はなんだったんだい?」

俺は言葉に詰まった。
俺は知っている。
俺にだけ、人間の仲間が居なかったことを。

「…ホイミスライムだ」
デブの目が輝く。
「ホイミスライム!?ホイミスライムってあのモンスターのか!?」
俺は目もくれずに黙って頷いた。

そこからのことはあまり思い出したくもない。
「貧乏人は人が雇えなくて大変だwwww」
「モンスターを仲間にするのは作品が違いますよwwww」
など、好き勝手言われ、最終的には破邪の剣で殴り合っていた。

勇者様が怒ったのはただ一言で、
「教会の代金、お前が払えよ」ということだった。


8月2日

デブがついに牢屋送りになった。
とても嬉しい。

経緯は謎だが(馬車内ではインターネットをしていたため)
何でも泥棒の冤罪が勇者様にかかっているようだった。
そこで人質を残し、真犯人を捕まえに行くらしい。

デブは勇者様に向かって
「お役に立てて光栄ですよ」
と皮肉を言っていた。
俺は笑いを堪えるのに精一杯だった。

デブがいなくなったことで、馬車の中は密度が低くなった。
風通しも良いし、今度のダンジョンは滝の裏らしい。

3人になった馬車内を改めて見渡して見ると、
なるほど、どうやらある程度の住み分けができているようだ。
つまり…悲しいことだが、俺の出番は勇者様の頭にはないらしい。

「よ~し、パパ危ない水着買っちゃうぞ~!」
とか外で言ってんの、もう見てらんない。

馬車内での生活はまだ浅いが、徐々に実態が見えてきた。
勇者様は基本的に踊り子、姫、占い師を基本メンバーに据えているようだ。
そしてその中の誰かが戦闘不能になった場合、サブメンバー、
つまり馬車内の俺たちに声がかかる。

踊り子が死ぬとジジイ。
占い師が死ぬと緑。
姫が死ぬと俺、俺も死んだ場合はデブ。

そういう運命のようだった。
これは能力的なものではないのだろうと俺は薄々気付いていた。
しかし、それを認めることはできなかった。

どうやらデブは馬車メンバーの中でも嫌われ者だったようだ。
緑が珍しく話し掛けてきた。
「へへ、ライアンさん。ライバル一人脱落ッスね…」
俺は不快感をあらわにした。
世界を救う旅だということをコイツはわかっているのか。
「ライバルだのなんだの…くだらんとは思わんのかッ!?」
俺は溜まっていた怒りを発散させるかのように叫んだ。
しかし、緑は肩をすくめ
「ひゅ~、おっかねぇ…」
と言いながら、また所定のスペースへ帰って行った。

「おい、補欠ども!!うるせぇぞ!」
勇者様の声が馬車内に響く。

「チョビヒゲです」
緑がチクった。
俺は睨みつけようとしたが、勇者様が馬車を覗き込んできたので、
「すみません」と言うしかなかった。

ジジイは寝たフリをしていた。


8月3日

デブが居なくなって2日目。
勇者様は宿屋にも泊らず、女性メンパーとキャンプをしていた。
一言意見をすべきかとも思ったが、サブメンバーである俺が言ったところで聞きはすまい。
最近はアリーナとか言う女が好みらしく、昨夜も遅くまで喋っていらっしゃった。

緑が陰湿にそれを覗いていたが、俺は心底疲れていたので、
さっさと眠ってしまった。
ジジイはいるのかいないのかわからないが、
時折、戦闘中などに踊り子の悲鳴が聞こえると急に機敏な動きを見せて外を覗く。
そしてため息混じりに体を馬車内に戻す。

タラララッタッタッターン

ジジイのレベルが上がった。
勇者様はそれに気付いていないようだった。


8月7日

城の北の森をようやく抜けた。
デブは餓死してはいまいか。
勇者様は全くダンジョンに行く気配を見せず、
あれから毎晩、別の女と一緒に森の奥深くへ消えていった。
昨日、ようやく占い師がダンジョンへ行くことを提案したようで、
勇者様もその気になったようだ。

馬車内は相変わらずだった。
ジジイは覚えたてのヒャダルコを得意げに連発していた。
特にターゲットも居なかったし、俺も緑も完全に無視していたので、
出しては消し、それでもまた出していた。
アルツハイマー対策なのだろう。

外では滝の音が聞こえた。
ダンジョンが近いようだ。

非常にショッキングな事件が起きた。

ジジイが勇者様に殺された。

ことの顛末はこうだ。
ダンジョンに到達後、踊り子が棺桶になって馬車に放り込まれた。
ジジイは喜び勇んで飛び出していったが、
ヒャダルコを使っていたためMPがほとんどない状態だった。

それに激昂した勇者様がパーティーアタックのふりをしてジジイを殴った。
ジジイはセクシーに水の羽衣を着ていたが、赤く染まった。
会心の一撃だった。

勇者様は、しかしまた森に戻れることが嬉しいらしく、
「さっさとリレミトルーラしようぜ」
と息巻いていた。


8月21日

ようやくバコタとかいう盗賊がつかまった。
デブを迎えに行くことになったとき、メンバー全員が嫌そうな顔をした。

デブは
「忘れられたのかと思いましたよ。いつもみたいに」
と皮肉を忘れなかった。

馬車に戻るときも、
「エンディングまで皆さんまたよろしく」
と馬車メンバーに皮肉を言った。


8月28日

田舎町についた。
勇者様は早速武器屋へ向かった。
レギュラーメンバーを連れて。

俺は少し距離をおいて、そのあとを追った。
武器屋につく。
なめし皮と金属の匂い。
王宮の武具庫を思い出す。

ふと陳列棚を見る。
そこには俺が求めてやまなかったあの武器があった。

『ドラゴンキラー 15000G』

俺はサイフの中を確認する。
当然…足りない。

俺のサイフの中には1章の時に自ら稼いだ2500Gしかなかった。
ため息をつく。ふと思い出し、サイフの小さなポケットを探る。
小さく折りたたまれた写真。
そこには町の住人に暖かく出迎えられる俺が写っていた。
そして…ホイミンも。

写真のホイミンが語りかける。

「ライアン様、勇者様と一緒に、皆が笑って過ごせる世界を作ってくださいね…」

俺は馬車に戻り、誰もいないことを確認してから、
声を殺し、泣いた。

目が覚めるとあたりはすっかり暗くなっていた。
知らぬ間に眠っていたらしい。

暗闇に目が慣れてくる。俺は馬車の中を見回した。
誰もいない。
ジジイも緑も今日は町のどこかにいるようだ。

ゴトッ…

何かが手に当たって倒れた。

それは、俺が夢にまで見たドラゴンキラーだった。
(勇者様…?)

信じられなかった。
夢にまで見たドラゴンキラーを、サブメンバーの俺に…?

俺はおそるおそるソレを手にする。

『ライアンはドラゴンキラーを装備した』

懐かしいテロップが流れた。
もう、夢でも何でも良かった。
一流の戦士を夢見て、いつかは最強と呼ばれるドラゴンをこの手で、
そんな幼き自分に、俺は俺を自慢したい。
それだけだった。

ガサガサッ

(もしや…勇者様?)
俺はどうリアクションしていいかわからず、馬車の中で息を殺した。

「なんだ、起きてたのか…」

俺はビクッとした。
「ゆ…」
喉を絞り上げ、声をひねり出そうとする。

「その武器、お前に似合うと思ってさ…」

涙が溢れそうになる。
言葉が出ない。
「…ゆ……」
「勇者様…」
(!?)
その時、馬車の外から確かに女の声がした。

「似合ってるぜ、そのキラーピアス」
俺はそっと外を覗く。
そこにはアリーナと、勇者様がいた。

「でも…これ…」
アリーナは頬を赤くしながら、何かいいたげにしていた。
「攻撃力が低い、そう言いたいんだろ?」

(なんだ?俺じゃないのか…)
俺は少しガッカリしたような気がした。
主君と認めた人に、施しを受けることを当然と考えていた自分を恥じた。

「女の子はさ…」
「えっ?」
「女の子は、武器も可愛いほうがいいぜ?」
アリーナは完全に茹蛸状態になっている。

「で、でも、この武器、攻撃力が5しかないんですよ?」
「アリーナがチャーミングすぎるからさ」
「え?」
「いや、言いたかっただけさ。確かに攻撃力は低いけど、二回攻撃できるんだぜ?」
アリーナはピアスをまじまじと見つめる。

「それに、アリーナは会心の一撃がよくでるだろ?だからいいかなと思ってさ」
「あ、ありがとうございます」
「いいっていいって、ほら、つけてやるよ」

勇者様の手がアリーナの耳に伸びていく。

馬車の中から、俺はそんな『BOY’S BE…』な状況を見ていたが、
耐えられず目をそむけた。
するとそこには、何時の間にか緑のヤツがいた。

ヤツはボソボソと何かつぶやいていた。
俺は気味が悪くなって、そそくさと眠る準備を始めた。

馬車の明かりを消すと緑の声だけがやけに五月蝿く響いた。

「ザキ…ザキ…ザキ…ザキ…」

『勇者には効かなかった。勇者には効かなかった。勇者には効かなかった。しかし、MPが足りない』

「ザキ…ザキ…ザキ…ザ…」
「もう、よさないか!」

俺は緑を羽交い絞めにした。
「男の嫉妬は…見苦しいぜ?」
「ラ…ライアンさん…」

緑は涙を浮かべていた。
「どうして…」
「?」
緑は堰を切ったように言葉を投げかける。
「どうして姫なんだ!どうしてミネアなんだ!!!
僕の方が防御力も高い!それに、公式設定でも僕と姫様はくっつくんじゃないのかよ!?
なのに、スタメンは外される、姫はたぶらかされる!
おまけに『ガンガンいこうぜ』の時はザラキしか使わないお荷物扱い!
僕は…僕は…!!!」

そうか、こいつも辛かったのか。
きっとこいつも夢を抱いて勇者のパーティーに入ったのだろう。
しかし、現実と幻想とのギャップに耐えられず、こんな姿に成り果ててしまった。
俺は優しく緑の背中をさすってやった。

「布団を敷こう、な?」

泣きじゃくる緑をあやしながら、俺は外へ目をやった。

そこには、きっと緑が最も見たくない光景が広がっていると知りつつも。
「そうだ」
勇者様が思い出したように話し出す。

「俺もそう言えば新しい武器買ったんだよ、高かったんだけどな」
「そ、そうなんですか?」
「あぁ、見て驚くなよ?15000Gもしたんだからな!」

『ライアンはドラゴンキラーを外した。』
『ライアンは破邪の剣を装備した』

俺は緑と共に泣いた。


8月29日

俺とクリフト(緑のヤツの名前だ)の間には奇妙な連帯感のようなものが芽生えていた。
いつもと変わらず朝が来て、いつも通り、勇者様のペースで冒険は進む。

デブは朝の5時頃馬車に帰ってきた。
ベロベロに酔っていた上に、風俗帰りらしく、イヤな匂いが馬車内を充満する。
俺とクリフトを一瞥して、
「ホモは調達しやすくてよござんすね」
とほざいた。

貴様のヨメはヤリマンだろうが、
といいたかった(不思議のダンジョン以降とファミコン版では子供の名前が違うため)が、
あとあと面倒なのでやめた。


8月30日

王家の墓とやらについた。
もはやシナリオについていけない俺は、クリフトと馬車の中で『UNO』をしていた。

「おぉ!はぐメタwwwwww」

勇者様の声がした。
どうやらはぐれメタルが出たようだ。

「悪いけど、マーニャちゃんとミネアちゃん、ちょっと馬車入ってくれる?すぐ戻すからさ♪」
ミ「は~い♪」
マ「浮気しちゃいやよ?勇者様!」
「しねぇってwwwwww」

「おい、グズグズしてねぇで出てこいや、ヒゲとデブ!!!!」
俺とデブはノソノソと馬車を出た。

「あ、ドロ2タンマ、そのままストップな!」
「え~、ライアンさんドロ2持ってるってこと?」

1ヶ月ぶりにバトル。
こういう『たたかう』以外の選択肢のないバトルがあったのが1章だったんだよな。
5章のバトルは『じゅもんつかうな』とか言うから困る。

俺は外へ出た。
なるほど、はぐれメタルが3匹ほどいるようだ。
俺はとりあえず『たたかう』コマンド入力。

アリーナが二回殴って一匹倒した。
俺の攻撃、ってその前に一匹逃げた。
はいはい、すばやさすばやさ。

しかし、残った一匹がギラを撃ってきた。
話のわかるやつだ。
でもトルネコはそんなの全然気にしない。
普通に俺より先に行動した。
しかもこけてる。
マジ空気よめねぇよ。

ちょ!武器飛んでって会心の一撃とか。
そんなのナシだろ。
あ~、戦闘終わった。

勇者様がデブを誉めている。
俺のことなど完全に忘れてる。
きっとこのあと『ならびかえ』するときに、ようやく俺のことを思い出すんだろうな。

憂鬱になりつつ、馬車へ引っ込もうとする。
視線を感じた。
デブが上から目線でわらってる。
どうとでもなれ。

レベルが上がった。しらねぇ。

すごすごと馬車へ引っ込む俺を笑うなら笑え。

「ライアンさん、レベルアップおめwwww はい、ドロ2」

涙が出た。


9月1日

変化の杖マジすごい。
勇者様が宝箱からゲットしたこの変化の杖。
しかし、イマイチ使いどころがわからないということで、
馬車の中に放置されていた。

それをジジイが自分の武器だと勘違いして使ったのがことの発端だった。
あっという間に若いバニーに早変わり。
デブが勃起していた。ウゼぇ。

最近馬車の中に慣れている自分がいる。
なんだかふいんき(←なぜか変換できない)もよく感じるし、
日記の文体や喋りも砕けてきている。
かゆ
うま


9月2日

変化の杖マジ面白いんだけどwwwwwwwwww
クリフトが調子こいてネネに化けて、風俗でお楽しみ中のトルネコに特攻wwwww
マジビビってやんの、デブwwwwww
でもビビったのも束の間、欲情してマウントポジションwwwwwwwww

テラ桜庭wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww

最近、インターネットで流行している、『2ちゃんねる』風に頑張ってみましたwwwww


9月3日

馬車内で変化の杖ブームが終わったようだ。
しかし、この数日で馬車メンバーの人間関係が改善されたのは良いことだと思う。

丁度ブームが終わったのを見計らったように、
勇者様が変化の杖を取りにきた。
ようやく使い道がわかったようだ。

俺らのお古でよかったらどうぞ使ってください、というムードが馬車内に満ちていた。


9月4日

なんでもデスパレスという所に行くらしい。
モンスターの本拠地らしく、普通に乗り込むのは危険だという。
そこでモンスターに変化して乗り込もうという作戦だ。

そんな緊迫した状況下にも関わらず、勇者様はレギュラーメンバーを変化の杖でバニーにして遊んでいた。
デブが勃起している。

「よっしゃ~!乗り込むぞ!」
勇者様が右手を振りかざす。
その右手にはドラゴンキラー。
もう考えまい。
俺は思考を止めて「お~」と言った。

変化の杖を振る。
皆モンスターになった。

「この杖、6人用なんだ」
と勇者様がスネオのようなことを言った。
デブとジジイがそのまま乗り込んだ。
ダンスニードルとガリガリの鉄球魔人です、と言い訳したら普通に入れた。
人間離れしすぎている。

デスパレスの中は広い。
王宮に戻ったようでホッとする、というと不謹慎だろうか。

大広間についた。
何かが始まるようだ。よくわからない。
完全にストーリーから切り離されているのだから。
仕方なく後ろのベロリンマン(クリフト)と『UNO』をしつつ時間を潰す。

何か親玉らしき人が登場した。

「アッテムトで地獄の帝王が見つかった!!!!」

オオー!!!!

完全に俺ら置いてけぼり。
誰だよ。
あ、色換え、赤ね。


9月7日

アッテムト到着。
地獄の帝王というからにはとても強いんだろう、腕がなるぜ、
と思えたのは7月までの俺。
頑張って行ってらっしゃいと思うのが今の俺。

月日って恐ろしい。

アッテムトの地下洞窟は馬車は入れないらしいので、
勇者様がパーティーメンバーを決めて行くみたい。
どうせいつもの女メンバーだろ、と思いつつ、
クリフトと『キングレオ(カードゲーム)』をやっていると。

「アリーナ…マーニャ…    and…… クリフト!(ジーコ風に)」
オオー!!!!

クリフトはよくわからないといった風だった。

その夜。
俺はクリフトと話していた。

「ライアンさん…」
「ん?」
眠れないというクリフトを連れて、俺は久々に酒場にやってきていた。
酒場、といっても、アッテムトだ。
活気はない。

「どうして僕なんでしょうか?」
俺はその質問に噴出してしまう。
「な、何がおかしいんですか?」
「いや…」
俺はグラスを傾けつつ続ける。

「お前も変わったなぁ、と思ってな」
「変わった…?」
クリフトは考える。

「俺と初めて会ったとき、おまえはレギュラーじゃないことに不貞腐れていた」
「……」
俺はそのまま、前だけを見て続ける。
自分を卑下しないように。
「その前、俺と出会う前のお前は、世界を救う、それだけを考えていたはずだ……
そして今、その一員になったことを改めて実感している…
それだけジャマイカ?」

「そう…ですよね。でも、僕なんかが、今更何故…?」
「お前は!」

俺は無意識のうちに声を荒げていた。
「お前は!俺たち馬車メンバーの代表なんだ!!
そんな情けない面は見せるな!」

ビクッとクリフトが身を震わせる。

「腐っても、勇者様さ。意味のない人事じゃない。
お前は、必要だとされた、それだけだ。
俺も当然、諦めちゃいない。レギュラーをな。
ただ、お前の方が少し早くそのチャンスをもらったんだ。
やれることをやるだけじゃないのか?」

「ライアンさん…」
「喋りすぎだ。もう戻るぞ。MPもしっかり回復させておけ」

俺は嫉妬していたのか。
それとも、自分を情けないと感じたのだろうか。

ただ言えるのは。
あの時、どうしてクリフトを止めなかったのか。
それだけを俺は今も後悔しつづけている。


9月8日

勇者様とアリーナ、マーニャ、そしてクリフトがダンジョンへ向かった。
クリフトは出発の直前、俺に目線をやると、
いつものクリフトらしからぬ、意思の強い瞳で、
頑張ってきます、といったような希ガス。

外はいい天気だった。
俺は一人町を出るとなまった感覚と筋肉を揺り起こすように、素振りを始めた。
昨日のクリフトへの言葉。
それはまさしく今の俺への言葉だった。

気がつくとあたりは茜に染まっていた。
誰も心配などしてはいないだろうと思った。
このままここで修行をしようかとも思ったが、
ミネアがいることを思い出し、町に戻った。

夜の町は、昼以上に静かで、胸騒ぎがした。

アッテムトに戻るとなんだか広場が騒がしかった。
(モンスターでも攻めてきたのか?)
しかし、すでに廃墟となった町。
それはないだろう。
やや警戒心を解きつつ、尚足早にそちらへ向かった。

「あ、ライアンさん。おかえりなさい」
「ミネア殿?これは一体…?」

ミネアは村人たちにスープを配っていた。
死んでいた町がにわかに活気を取り戻したようだった。

デブとジジイは相変わらずどこかへ行っているようだった。
俺は食事を済ますと馬車へ戻ろうとしたが、
ミネアと二人っきりなのも何だか照れくさいので、
また森へと向かおうとした。

「ライアンさん、また修行ですか?」
片付けをしていたミネアが気付いた。
「ん?あ、あぁ…」
俺はぎこちなく返事を返すと早々にその場を後にしようとした。
「あ、待ってください。夜は危ないですよ?回復魔法があった方が安全ですよね」

俺は自分の鼓動が早くなっていくのを感じた。

「すぐ用意しますから、少し待っていてください」
「ktkr」
「え?」
「いや、なんでもない。早くしてくれ」

暗い森の中に俺の剣が風を切る音だけが静かに響く。
雑念を振り払うかのように俺は一心不乱に剣を振る。

一息ついて近くの岩の上を見る。
ミネアが満月の下でタロットをめくっている。

「いつも…」
不意にミネアが話し出す。
「いつも姉さんのことを占うと、このカードが出るんです」
言いながらミネアは太陽のカードを見せる。

「姉さんは不思議な人です。
夜を生きてきた人なのに、その明るさで皆を幸せにしている…」
俺は突然のフラグ展開にそれなんてエロゲ?と思った。

「私も姉さんみたいになりたかった。
でも、私はいつも星のカード。」
「いいのではないか?それで」
俺は剣を振りながら応える。

「二つも太陽があると、星は死ぬ。
何より暑くて敵わん。
太陽は太陽で、星は星で意味がある。
それだけだ」

「ライアンさん…」

「つっ!」
俺は動揺していたのか、剣を持ち換える時、腕に小さな傷を負った。

ミネアは一つ微笑むと、
「ホイミしますよ」
と岩から降りてきた。
「すまん…」

俺はホイミを受けつつ空を見た。
空にはたくさんの星が輝いていた。
この一つの星のために剣を振るうのも悪くはないと思った。

その時、強烈な殺気を俺は察知した。
(敵か!?)
確かにモンスターの気配だ。
しかし、この感覚は…?

どこにいる…
俺は目を凝らす。
木々の間に、草の陰に。

そして。
一本の木の陰にソレはいた。

「ホイミン!?」

私が初めてもらったホイミ。
それはホイミンズオリジナルでした。
それは甘くてクリーミィで、
こんなホイミをかけてもらる私は
きっと特別な存在なのだと思いました。

1章終了後 ライアンの談話より抜粋

「ホイミンなのか!?」
俺は声に出す。
気配の主はゆっくりと月明かりの下に姿をあらわす。
それは紛れもなく、バトランドで別れたあのホイミンに違いなかった。

「ライアンさん、知り合いの方ですか?」
「あぁ…昔共に戦った仲間だ」

「昔…ですか、ライアンさん」
ホイミンが口を開く。
「そうですよね、昔の話ですよ。アンタ変わっちまった。
そんな女にホイミを受けて喜ぶような人間じゃ、アンタなかったはずだ」
苦虫を噛み潰すようにホイミンが言葉をつむいでいく。

「ホイミン…」
「アンタと別れた後、俺がバトランドでどんな仕打ちを受けたか、
それさえもアンタはしらねぇはずだ。
英雄のお付きとはいえ、俺はモンスターなんだぜ?」


ビクリと体が震えた。
俺は、なんて軽率なことをしたんだろうか。

「ライアンさん、いや、ライアン。
アンタ言ったよな。俺を人間にしてくれるってよ。
一緒に旅をするうちに、人間らしい心をもった俺なら、
きっと人間になれるってな…」

ホイミンの瞳に涙が浮かぶ。

「俺は…俺は今のアンタみたいになるくらいならこのままでいい!
ガチムチなバトルを楽しむアンタみたいになりたかった!
だから、さようならだ」

ホイミンはフワフワと森の中へ消えていった。
俺はその背中を止める言葉を持っていなかった。

ミネアが心配そうにホイミンと、俺を交互に見ていた。
「あの方の進む道は…修羅です」
消え入りそうな声でそう言った。


9月9日

辛いことは続くものだ。
クリフトが帰ってきた。
しかし、それはクリフトではなくなっていた。

ダンジョンから出てくるなり、勇者は言っていた。
「やっぱ健全な男女交際は2:2でしょwwwwww」
と。

クリフトは一人前のチャラ男になっていた。
ダンジョン内でどうやったのか知らないが金髪になっていた。

「ク…クリフト、『UNO』しないか?」
「え?あぁ、ライアンさんじゃないッスか。今時『UNO』なんてモテないッスよwwww」
俺の中で何かが音を立てて崩れていく。
そんな俺の背中をミネアがそっと支えた。
ホイミンの声が蘇る。

「アンタ そんな人間じゃ なかった ハズダ」

気がつけば馬車内は赤く染まっていた。
足元ではクリフトが、もはや動かないが、転がっている。

ミネアのすすり泣く声が聞こえる。
シュルシュルと、衣服を身にまとう音がやけにうるさい。

これが人間か?ホイミンよ。
俺は人間なのか?

イムルの村の宿屋で話したことを思い出す。

「僕が人間になるより、ライアン様、貴方がモンスターになるほうが早いかもしれませんね」
「ははは、こやつめ…」

誇りも何もない。
俺は戦士になろう。


9月10日

勇者が馬車に外から鍵をかけた。
なるほど、くさいものにはフタ、か。
ジジイは長いこと帰ってきていない。
どうやらロザリーヒルの酒場においてきてしまったようだ。

デブは昨夜遅く帰ってきた。
「商人がこんな町でやることっつったら人買いに決まってるだろ」
と、ブラックなジョークを口にした。
それからクリフトを見て、
「あれ?ダンジョンで死んだの?それともアンタが殺してたりして」
とも言った。
鋭い視線を受け流すように、俺はさぁなとだけ言った。

ミネアは静かに晩飯の支度をしている。
外からは勇者と女二人の嬌声が聞こえてくる。

床に散らばったタロットカードを集めた。
ひいてはいけないカードだけが無くなっていた。


9月11日

勇者様はガスの壺を気球屋に渡したようだ。
「空の旅とかやばくね?」
と相変わらずはしゃいでらっしゃる。
馬車は乗れないんだろうな、と思うが
聞いても返事もわかっているし何も聞かず、
俺はリバーサイドの町を出た。

「ミネアか」
俺の後ろを歩く足音が止まる。
「……どうするつもりですか?」
「何がだ?」
検討はついているが、俺は気付かないフリをした。

「気球、完成したら、私たち、どうなるんでしょうか…」
常識的に考えて、馬車が入る余裕など、あのサイズの気球にはあるまい。
いらない、使えないものは捨てていくんだ、となればデブを筆頭に馬車メンバーは切られるのだろう。
「お前は…お前はレギュラーに戻れ」
「いやです」
ミネアはハッキリと言った。

「私の居場所はここです」
ミネアの声が背中から聞こえる。

ホイミンよ。
俺は間違っていたのかもしれない。
だが、俺はやはりお前の嫌う人でありつづけたい。
そう思う。

「ライアン様、空飛ぶ靴はダンジョン内で履いちゃだめですよ…」

さようなら、ホイミン


9月12日

パーティーを見捨てた、という世間体を気にしてか、
気球は馬車も入れるサイズだった。
どうやら心配は杞憂に終わったらしい。
クリフトの棺桶がイヤな匂いを出している。
勇者様はすっかり忘れているようだ。

今日はエルフの里に向かうらしい。
3人パーティーだから、とまたスネオのようなことを言った。
諦めて馬車で待機していたら帰ってきた。

女が増えていた。
どうとでもなれ。


9月12日

今日の勇者様の名言ベスト3
3 「やっぱハーレム落ち着くわ~wwww」

2 「何か馬車がくせぇwwww」

1 「天空人と人間のハーフ産まね?wwwwww」

俺の武器は未だに破邪の剣だ。


9月13日

勇者様が何かわめいている。
朝っぱらから五月蝿い。
馬車の窓から外を見る。もう昼かよ畜生。
なんか天空人とモメてる。

「元気だしなよ勇者様、私たちがいるじゃない」
と踊り子が慰めている。
「なんで女の子の代わりが竜なんだよ。畜生じゃねぇか…」
「しっ!まだ見てるからあんまり大きな声出さないの!」

レギュラーメンバーが勇者様、踊り子、姫、竜になった。
俺はその畜生に劣るというのか。
イライラしながら竜早く死ね、と思った。

メタルキング相手に火を吐いた。
すげぇ、あいつ強いよ。
早速俺より役に立っちゃったよ。

どうとでもなれ。


9月16日

闇の洞窟長すぎ。携帯電波届かないから凄い暇。
ネットできないのが何より辛い。
宝箱がいっぱいあるみたいだった。
いい武器とかいっぱいあるんだろうなぁ。
でもあのバカ勇者様はきっと捨てちゃうんだろうな。
もったいない。

俺の鎧はまだせいどうのよろいです。


9月20日

ついにデスピサロ登場。
勇者様がいきっている。
「終わりにするぜ!!」
はいはい、ワロスワロス。

戦闘開始。2ターン目。早速棺桶が飛び込んでくる。
踊り子だ。
ミネアがザオラルをしてる。
デブがノロノロと出て行く。
「多分すぐ死ぬわ」
本当にすぐ死んだ。

3ターン目。しぶしぶ俺も出ていく。
唸れ!豪火よ!とか、俺も若干テンション上がってクロコダインの真似。
ただのギラです。ふひひ、すいません。
ぎゃ~、いてぇ、防御力俺低いのに狙うなよバカが。
勇者と姫防御してる。死ね。

デスピサロのいてつくはどう!

勇者様が「やっべ」とか言ってる。
俺は何の魔法もかかってないから別に構わない。
こうげきこうげき。
よっしゃ会心の一撃。
剣が折れた。死ね。

「おいヒゲ!コレ使え!」
勇者様が何か武器投げてきた。
まだ戦えってのか畜生。
やけになって攻撃する。
うわ、怪我治った!すげぇ仕組み。

馬車からデブが降りてきた。
ザオラルが効いたらしい。
「人使いがあら…」
また死んだ。

竜のヤツが頑張っている。
こうやって、モンスターと肩を並べて戦っているとあの日を思い出す。
今の俺、猛烈に戦士っぽい。
自然と肩に力が入る。

「よぉし!行くぞ!!」
「ヒゲいきんなよwwwww」
勇者本気でウザい。

デスピサロのかがやくいき!

うわ、こいつの息すげぇ冷たい。マジ勘弁。
もってくれよ!俺のウロコの盾!!
と思って左手を前に出す。
盾がない。

「あ、宿代足りなかったからこの前売っちゃった」

目からウロコだ。

マジ強い。ピサロマジ強い。
ミネアが思い出したようにクリフトにザオラルしてる。
そういえばそんなヤツもいたな。
あぁ、ジジイ、お前の不在が今こそ恨めしい。

勇者様がようやくガチになってる。
これだよ、俺が望んでいたのは。
竜が死にそう。俺はとっさに姫から賢者の石を引っ手繰って使った。
「ナイスだ!ライアン!」
初めて名前を呼んでもらえた。
泣きそうになった。
ホイミン、俺、頑張ってるよ。

デスピサロはだいぶ弱っているようだった。
あと一押しだ!

「あ、これ世界中のしずくじゃなくて、時の砂じゃんwwww」

クリフトが馬車から出ようとして、また棺桶に戻っていった。

ガチモードになったら結構ラクだった。
何これ?ドラゴンシールドとかいうの?
これがすごい。うろこの盾と全然違う。
炎とか防いでくれるらしい。

あんまり魔法が効かないから、ってマーニャが馬車に入ってきた。
タバコ吸ってる。この女マジ怖い。
俺はさっさと外へ出る。

「うおおお!!」バキーッ
砂のせいでまた武器が破邪の剣なの忘れてた。
「ヒゲ空気よめよ」

お前だよボケが。

「はぁぁぁ!せんかれっこうけん!」
とか姫が言ってる。
何こいつ、アニヲタ?きめぇwwww

奇跡の剣でガンガン殴る。
全然余裕じゃん、いけるいける。

馬車の中からマーニャの声がした。
「あと5万出すなら抱かれてもいいよ」

「デブ死ねよ」
勇者とハモっちまった。畜生。

クリフトの死体の傍でセックスすんな。

「ぐわぁぁぁぁ…」
デスピサロ苦しそう。よ~し、シメは勇者様に任せよう。

「皆…」
と、勇者様が語りだす。真面目な空気が流れる。

「俺はずっと不甲斐ない勇者だった。
チャラいことばっかりやってきたし、戦力とか、そういうのを考えずにやってきた。
トルネコ、ブライ、ライアン、クリフト。
貴方たちが後ろにいてくれたから、俺は好き勝手に戦うことができた。
本当に感謝してる」

「勇者様…」
アリーナが見とれている。

「だから!
だからこの戦いは皆で終わらせよう。
俺だけじゃなく、皆で勇者になろう」

勇者様は呪文を唱え始めた。

俺はこのパーティーでよかった。
ここまでついてきてよかった…

「ミナデイン!!!!」

死んでたはずのクリフトが馬車から飛び出してくる。
俺はマーニャと入れ替わる。

「へへっ、すんませんねww 見せ場いただきま~っす。あざーす!」

俺は雷の音が聞こえないように布団を被った。


11月4日

バトランドについた。
王様が出迎えてくれる。

「ライアン…大儀であった。よくぞ…よくぞ無事で…」
「王様、一国を預かる主が、国民の前でそのような…」
「構わん。それに、見よ」

王宮前の広場には町中の人が集まってきていた。

「民も、ワシにこうすることを望んでおるよ…」

俺は昨夜宿屋で考えたスピーチを読み上げた。

国民が歓声を上げる。
俺の戦うべき戦いは終わり、
俺は自分の戦いたい場所を探そう。

ふと眼下に集まる村人の中に懐かしい気配を感じた。
(まさかな)
俺は振り返る。ミネアがいる。

「ライアン…アンタは変わっちまったよ…」
青い髪の青年が呟いた。
そして、森の方へと消えていった。


(おわり)

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